以前に機械式のディスクブレーキについて話題にしたことがあります。
その際にセットで記事にしたいと思っていたのが、対応するブレーキレバーについて。

昨今は油圧式と区別するために、紐引きやケーブル引き、機械式ブレーキレバーといった呼ばれ方をされますが、油圧式ディスクブレーキの一般化により、質の高い製品が次々と姿を消しています。
機械式ディスクブレーキだけでなく、キャリパーブレーキ・カンチブレーキ・Vブレーキには必須なパーツにつき完全に廃れることは無さそうですが、入手が難しくなる前に高品質なブレーキレバーはしっかりと確保しておきたいところ。
自転車に詳しい方ならご存知かと思いますが、機械式にはブレーキレバーのテコ比によりケーブルの引き量が異なる【ショートプル】と【ロングプル】の二種類があり、両者で用途が異なります。
一応、ショートプルはカンチやキャリパーブレーキ用、ロングプルはVブレーキ用という括りなものの、最近は需要の低下からか両方に対応できる切り替え機能を備えた製品が主流。
また、機械式ブレーキレバーはオールドスクール系のカスタマイズで重宝される傾向にあり、特に金属光沢のあるシルバーやポリッシュカラーの需要が高め。
機械式ブレーキレバーを選ぶ際は、引き量の違いや切替機能の有無、レバーリーチ(握りしろ)を調節できるリーチアジャスト機能、カラーバリエーションの豊富さ、これらに注目するのがオススメでしょうか。
因みに、同じ機械式ブレーキレバーでも軽量タイプはレバー側にリターンスプリングが備わっていないことが多いので、軽量化が目的の場合は使用感の良し悪しと折り合いをつけておくことを忘れずに。
前置きが長くなりましたが、今回は現在入手可能な機械式ブレーキレバーを幾つか紹介してみたいと思います。
勝手に厳選!入手可能なオススメのフラットバー用機械式ブレーキレバー

トップバッターはみんな大好きシマノから。
とはいっても現行のラインナップは数える程しか無く、その殆どが2.5フィンガーレバーにリーチアジャスト機能、ショートプル&ロングプル両対応の切替式というほぼ共通化された仕様。
画像下段に並んでいる以下の三種類が実質的なラインナップとなり、実売価格はほぼ横並び。
Tiagra BL-4700
SORA BL-R3000
Claris BL-R2000
グレードが異なるので、重量面での差別化に期待したくなりますが、残念ながらこちらも似たり寄ったりでペア重量は170~180g程となっています。
唯一の希望は画像上段のBL-R780で、こちらはUltegra 6800シリーズに属するシマノの機械式ブレーキレバーでは現行で最上位の製品。
BL-R780にはシルバーカラーが準備されいて、画像で見るよりもポリッシュに近い光沢感が人気を集めています。
残念ながらシマノHPには既に掲載されておらず、恐らくあと数年で市場からも姿を消してしまうでしょう。
因みに、ALIVO BL-T4000という2フィンガーのMTB用レバーも同様の状況にありますが、こちらは価格なりのチープな質感ですしVブレーキにしか対応しないため、無くなっても大きな損失にはならない印象。
前述した通り、シマノ製の機械式ブレーキレバーは切替機能に特徴があり、カンチ・キャリパー・メカニカルディスク・Vブレーキの全てに対応するため、初心者でも失敗しづらいのが魅力でしょうか。
どのグレードでもケーブルアジャストボルトが樹脂製で安っぽく見えてしまう難点はあるものの、特に拘りが無いのならシマノ製で間違いありません。

シマノに続いてお次はSRAM/スラム。
機械式ブレーキレバーはスラム傘下のAvid製がよく知られていて、シマノよりも作りが個性的。
画像右がロングプルでVブレーキに対応するAvid FF-5
画像左が切替式で全ブレーキに対応するAvid Speed Dial7
重量はFF-5がペアで150g、Speed Dial7が180g、両者ともリーチアジャスト機能を備え、裏返してもレバーの表情が変わらないリバーシブル仕様。
レバーを左右で入れ替えたり裏返したりといった変則的な使い方ができ、他のブレーキレバーには見られない面白い特徴があります。
Avid Speed Dial7が特に人気で、その名の通りダイヤルを捻ることでショートプルとロングプルを工具不要で簡単に切替可能。
シマノ製と同様に全ての機械式ブレーキに対応する上に、トラブルにも強いという懐の深い製品に仕上がっていますが、折角のリバーシブル仕様なのにクランプ部分がオープン式じゃない点に若干の不満も。

お次はこちら、憧れのPAUL COMPONENT製の機械式ブレーキレバー。
見た目が似ているので区別が付きづらいですが、Vブレーキ対応のPAUL LOVE LEVERとカンチ・キャリパー対応のPAUL CANTI LEVERの二種類があり、それぞれレバーのテコ比が異なります。
更にロングプルのLOVE LEVERには2フィンガーの「Compact」とフルフィンガーの「2.5」の二種類があり、ショートプルのCANTI LEVERにはレバーリーチ(握りしろ)の異なるショートとスタンダードがあるなど、意外にラインナップが複雑。
個人的にケーブルアジャストボルトが金属製な点にかなり惹かれますし、重量はLOVE LEVERが125g/137g、CANTI LEVERが134gとそこそこ軽量なのも魅力的に映ります。
ただ、ポリッシュやシルバーを含む豊富なカラーバリエーションやアルミ削り出しの美しいフォルムが人気を集めるものの、ご存知の通りPAUL製のブレーキレバーは大変高価。
ブレーキレバーだけでもペアで40000円以上とまごうことなき高級品なだけに、仮に購入できたとしても安心して使えないという庶民泣かせな欠点も。

PUALの直後だけに余計にそう感じますが、お次はコスパに優れるTRPとTEKTROのブレーキレバー。
既に油圧にシフトしているせいか、テクトロのレースグレードであるTRPの機械式ブレーキレバーは画像左のML800のみという寂しさ。
おまけにVブレーキのみ対応のロングプルで機能も必要最低限のシンプルさにつき、あえて選ぶ必要は無いかも知れません。
それに対して選択肢が大変充実しているのがテクトロ製でHPページ上には二十種類近いラインナップが確認できます。
その中でも比較的人気なのが画像右のTEKTRO MT2.1で、ショートプル・ロングプルの切替機能を有した2フィンガーレバーという仕様。
重量は180g前後でカラーバリエーションは二種類なものの、軸足をMTBに置いているブレーキレバーなせいかケーブルアジャストボルトがしっかり金属製なのが個人的に好印象。
2500円前後という価格の割りに耐久性に優れるという評価も聞かれ、トライアル用の機械式ブレーキレバーとして使われることも。

お次は軽量化マニア垂涎のブレーキレバーをふたつ。
画像左は軽量パーツを多くリリースしていることで知られるKCNCのVB6
画像右はイタリアの軽量パーツブランドであるEXTRALITEのUltraLevers3
両者ともにVブレーキ対応のロングプル仕様となっていますが、レバーは2フィンガーで重量はKCNCがペアで65g、EXTRALITEがペアで47gと一般的なブレーキレバーの1/3程度と驚異的な軽さ。
こういった製品は軽量化のためにレバーのリターンスプリングが省略されていることが多いものの、EXTRALITEには珍しく備わっていて、肉抜きと滑り止めを兼ねるレバーのパンチングメッシュ加工も含めて魅力的な製品に仕上がっています。
どちらも耐久性をあまり要求されないミニベロや折り畳み自転車の軽量化用として使いたくなりますが、Vブレーキやロングプル仕様の機械式ディスクブレーキにしか対応しないのが残念なところ。
また、KCNCは国内でも購入可能ですがEXTRALITEは全く流通していないため、入手するには海外通販を頼ることになります。
因みに、この手の軽量ブレーキレバーは中華製の粗悪コピー品をよく見掛け、レバー部分の仕上がりが雑だったり剛性不足だったりするので、軽量化目的だけで安易に手を出すのはオススメしません。

最後は隠れた人気を誇るブレーキレバーをご紹介。
画像左はVELO ORANGEのcru brake leverで、ロングプルとショートプルの両方をラインナップ。
ペアで76gと大変軽量で、ショートプル用を選べば前述の軽量レバーでは実現できなかった、カンチブレーキやキャリパーブレーキにも対応してくれます。
残念ながらリターンスプリングは備わっていませんが、光沢感のあるシルバーカラーが選べるのも魅力でしょうか。
画像右はDIA-COMPE/ダイアコンペのブレーキレバー、画像上がSS-6で画像下がMX-2 BL200となり、スペック表に説明が見られないためそれぞれのフィンガー数は不明。
MX-2 BL200はショートプル・ロングプルの切替機能とリーチアジャスト機能を有し、重量はペアで168gと卒の無いべーシックな仕上がり。
SS-6はカンチ・キャリパーブレーキ用のショートプル仕様なものの、その見た目の良さとシルバーカラーをラインナップしている点で人気を集める製品です。
リーチアジャスト機能を備え、重量はペアで160g、高級感のある見た目の割りに4000円以下で買えてしまうコスパの良さも見逃せません。
まとめ
機械式ブレーキレバーの中から気になった製品を幾つかピックアップしてみましたが、EXTRALITEの軽量レバーやダイアコンペのSS-6が私好みですね。
記事中で説明し忘れましたが、同じメカニカルディスクブレーキでもオンロード用とオフロード用とではケーブルの引き量が異なります。
使用するブレーキキャリパーがフラットマウントならショートプル、インターナショナルやポストマウントならロングプル、大抵はこうなっていると思いますが、導入前は要確認。
不安な場合は切替機能のあるブレーキレバーを選ぶのが無難ですね。
あと、フラットバー用の機械式ブレーキレバーはハンドルへの固定部分がオープンクランプになっていない場合が殆ど。
ブレーキレバーを交換する際には、グリップやシフターを取り外す必要があるため、少しだけ苦労するかも。