春の気配がそこかしこに漂い始め、そろそろ車体のバトンタッチをする頃合い。
既に路面に積雪は無く、例年通りならファットバイクからフルサス29erやミニベロへと乗り換えても良い時期なのですが、今年はもう少しだけファットバイクを味わい尽くすつもりでいます。
本来なら、シーズンオフと共にファットバイクのカスタマイズも一段落させるところですが、お察しの通り延長戦に突入。
当初は中途にしていた160mm径から180mm径へのディスクローター交換に手を付けるつもりが、長期に渡って品薄だったブツがようやく手に入るようになったと聞き、急遽ターゲットを変更することに。
さて、そのブツとは……記事のタイトルで既にバレバレですが、SURLYのマルチポジションハンドルこと「MOLOKO BAR/モロコバー」です。
「ずっと欲しかった♪」というよりも「一度くらいは試してみたい!」といった方が正確ですが、興味を持ちながらも、購入機会を逸していたのは品薄だけが理由ではありません。
実はこのハンドル……評判はすこぶる良いのですが、めちゃくちゃ重いのですよ。
納車以来、コツコツと軽量化してきたファットバイクに対して結構な仕打ちにも思えますが、今回はそのあたりも含めてモロコバーの詳細や使用感について触れてみます。
SURLY「モロコバー」と純正「APE モロコバッグ」の詳細
さて、在庫が復活したと聞き早速購入してみましたが、いつの間にやら重さだけでなく値段までもがベビー級になっていました。
価格は税込17380円で以前とくらべて4000円近くの値上がり、そこそこ良いカーボンハンドルが余裕で買えてしまうお値段です。
海外通販なら少しは安く買えるのかな?と思案してみるも、昨今のSURLYやWOLF TOOTHは国内との価格差が殆ど無くなっていて、逆に送料や輸入消費税分で不利になる場合も。
外観はアルファベットの「A」と「H」を混ぜたような形状で、カモメハンドルにブルホーンの角と横棒が加わった構成。
素材はクロモリ製でハンドル幅は735mm、バックスィープは驚きの34度、ライズは27mmとのことですが、恐らくこの値は先端のブルホーン部分のことで、握り部分はクランプ部分と同じ高さになっています。
カタログスペックに記載のない部分を測ってみると、握り部分の長さは22cm、パイプに囲まれた中央スペースは横が最長31cm、縦が最長10cmでした。
握り径はスタンダードな22.2mmで、ハンドル幅685mmまでカット可能な目盛も付いています。
クロモリで試した経験はありませんが、アルミよりも肉薄なため切断には市販のパイプカッターで十分でしょう。
クランプ径は31.8mmとMTB界隈では一昔前の規格。
SURLYはクロモリに拘るブランドだけに、このクランプ径でも十分な強度が出せるということなのかな?
現在、トレイル向きのハンドルはクランプ径35mmが主流になりつつあり、所有するファットバイクもフルサス29erも残念ながらこちらの規格です。
そのままでは交換できませんし、気に入るかどうかわからないハンドルのために、わざわざ31.8mm対応のステムを買い増す余裕はありません。
そこで購入したのがこちら、「ハンドルバーシム」です。
ハンドルとステムの間に噛ませることにより、クランプ径25.4mmのハンドルをクランプ径31.8mmのステムに対応させたり、クランプ径31.8mmのハンドルをクランプ径35mmのステムに対応させたりといった変換が可能。
有名処はディズナの「カーボンハンドルシム」ですが、この製品はハンドルシムとして以外にも、カーボン素材によりハンドルの振動吸収性がアップするというシロモノ。
今回は間に合わせで安価な中華アルミ製を選びましたが、ステムに対して横幅が若干不足しがちなので、同じ中華製でも画像の2ピースタイプではなく、左右のクランプ部分だけを嵩増しする4ピースタイプの方がオススメですね。
個人的に少し残念に感じたのが、先端のバーエンド部分。
市販品で22.2mmの握り径とツライチにできるエンドキャップは選択肢が少なく、ピッタリフィットするSURLY純正「MOLOKO BAR TOPEND CAP」は激レアで入手が困難という有様。
バーテープを巻くつもりなら、エンドキャップが多少オーバーサイズでも差し支えありませんが、純正品は400円くらいなので、オマケで付属してくれてもいいのに……と思わず愚痴をこぼしたくなります。
当面は手持ちのエンドキャップで凌ぐことにしますが、代替品を購入するならNITTOのアルミ製エンドキャップ「EC-02」が良さそう。
EC-02は外径22.2mmとハンドルの握り径と同一、対応ハンドル内径は15.5~17mmと少し小さいですがゴム板などで嵩増しすれば十分に使用可能ことのこと。
因みに、モロコバーの内径は約20mmでドロップハンドル用のエンドキャップの方がフィットしやすい仕様になっていました。
さて、最も気になるモロコバーの重量ですが、実重量は735gとカタログスペックの709gを超過する結果に。
SURLYに精度を求めるのはナンセンスですが、確か強度に優れる粉体塗装だった筈なので、ばらつきが出やすいのかも知れませんね。
交換予定のカーボンライザーバーが180gなので、実に四倍以上という凄まじさ……覚悟して購入したものの、やっぱり気にせずにはいられません。
今でこそ手放せない装備になっていますが、何となくドロッパーシートポスト導入前の悪印象に似ています。
続いて、よせばいいのに思わず購入してしまったのがSURLY純正のモロコバー専用ハンドルバッグこと「APE-MOLOKO BAG」です。
正直、8580円と割高で使いどころも難しい微妙な製品なのですが、モロコバーにジャストフィットする一体感が最大の魅力。
こいつを買わなければ、バーテープ・エンドキャップ・グリップに予算を割けたのですが、モロコバー専用という文言には抗えませんでした。
APEモロコバッグの寸法は、外寸が100 x 100 x 270mm、内寸が90 x 90 x 254mmで、内壁にはクッション材が封入されています。
SURLY公式のアナウンスによると、内容量は350ml缶を横にしてちょうど二本収納できるサイズ感だそうで、画像で判断する限り上部にはまだ少しの余裕が見られました。
試しに500ml弱のペットボトルを放り込んでみましたが、感覚としてR250に代表されるロングタイプのツールケースを、一回り大きくした収納力といった印象。
付属する四本のベルトでハンドル中央部に取付けますが、周囲を囲むパイプにより容量の遊びが無くなりますし、バーテープを巻く場合はそれに拍車が掛かるので、実容量は大型ツールケースの代用程度と捉えた方が良いかも知れません。
モロコバーにはこんな感じでフィット。
モロコバッグの左右に適度なスペースが確保され、バッグ装着時でも握りの自由度を妨げない作り。
この画像からはわかりませんが、バッグの正面側にはコードを通せる小さなスリットが備わっていて、内部に収納したライトの外付け電源やモバイルバッテリーとの接続も容易になっています。
ぶっちゃけ、モロコバーにマルチポジションハンドルとしての要素を期待していたり、フロントキャリア的な使い方もしたいと考えているなら、モロコバッグは蛇足にしかなりません。
ハンドルまわりに様々なガジェットをマウントしたい場合も同様で、良くも悪くも使いどこが難しい製品というのが、現時点での率直な感想ですね。
舗装路からトレイルまでコレ一本!「モロコバー」の使用感について
ハンドルは乗ってナンボということで、早速ミドルライドに出発。
トップエンドキャップにはファブリックのシリコンバーテープに付属していたものを流用、どうやら24mm径らしくブルホーン先端が少し不格好です。
モロコバーの取付けは、後の微調整を考慮して素直な感じにしてみました。
長さ70mm、アングル±0度のステムだと、画像のようにハンドルが上向きになり、角部分がそこから更にホップします。
交換の前後をサイドビューで比較してみると、モロコバーとライザーバーとではハンドルエンドの向きが異なることが良くわかりますね。
モロコバーの握り部分が下向きになっているのに対して、今まで使用していたライザーバーはハンドルを上から押さえ込みやすい上向き。
また、取り外したカーボンライザーバーは、ハンドル幅が760mm、バックスィープが8度、アップスィープが5度、ライズが20mmでしたから、交換によりライズ分とアップスィープ分だけ、握り位置が低くなりました。
3cmくらいだと思いますが、この辺はステム位置を上げたり、ハンドルのクランプ角度を調節したりして、最適なフィッティングを模索していく予定。
トップビューはこんな感じで、ハンドルのバックスィープ角が激変したことが一目でわかります。
バックスィープが8度から34度へと大きく変わったものの、握りの前後位置はほぼそのまま、ステム長の見直しやサドルの位置調整は特に必要ありません。
また、ブレーキレバーやシフトレバーの位置にも大きな違いは無く、面倒な油圧ブレーキホースの再カットとも無縁でいられます。
さて、肝心の使用感ですが、これは前評判通り本当に良いハンドルですね。
フラットバーやライザーバーは脇を大きく開いた体勢で手の甲が上を向くため、嫌でも手首の角度に無理が出ますが、モロコバーは実にナチュラルで前腕から手首までスッと一直線に伸びてくれます。
どんなハンドルでも交換直後は違和感を覚える物ですが、「出走後すぐに慣れる」を通り越して、スタート直後から全く違和感が無かったほど。
ドロップハンドルやブルホーンは手の甲が体の外側を向く自然な角度のまま乗っていられますが、モロコバーはこれらに近い角度でのライドが実現できそう。
また、34度というバックスィープのお陰で脇が締まるようになり、肘の位置も自然と低くなりました。
ワイド幅のフラットバーやライザーバーでロングライドすると、翌日に僧帽筋が軽い筋肉痛になっていましたが、これは前傾した頭の重さを僧帽筋が支え続けている他に、脇が大きく開き肘の位置が高くなることで肩が勝手にすくんでしまうのも一因です。
モロコバーは手首はもちろん肩を含む僧帽筋への負担軽減が期待でき、標準的な握りでミドルライドしただけでも、その効果の片鱗がうかがえました。
正直、これだけメインの握りが秀逸だと他の部分を握る必要はあるのか?と疑問に思いますが、とりあえず一通り実践。
大雑把な感想をいわせてもらうと、中央握りはそこそこ実用範囲、ブルホーン握りはオマケ程度というのが現時点での印象でしょうか。
グローブをしていてもバーテープ無しだと握りが細く表面が滑りやすいため、マルチポジションハンドルとして使うならバーテープは必須、やはりモロコバッグとは排他利用になるかも知れません。
どうしても両立させたいなら薄手のバーテープを使い、ハンドル備え付けのガジェット類は極力減らすのがオススメですね。
因みに、どうやってバーテープを巻くのかで頭を悩ませそうですが、変則的な方法を使えば左右それぞれ一巻きずつ、未カットで完了できるとのこと。
YOUTUBE上には海外の方のHOWTO動画が幾つかアップされていますが、どれも雑に見えたのであまり参考にならないかも……機会があれば巻き方を追記してみたいと思います。
興が乗ったので、モロコバーで近場のプチトレイルに。
舗装路やツーリング向きなハンドルと思いきや、モロコバーはトレイルでも優秀と聞いていたので、少しだけ試してみたくなりました。
まず最初に感じたのは、モロコバーはサスなしのフルリジッド車に優しいということでしょうか。
クロモリ&フルリジッド大好きなSURLYだけに、当然の設計なのかも知れませんが、路面からの突き上げがカーボンライザーバーと比べて非常にマイルドで、不意を突かれても手首にダメージを負うことがありませんでした。
誤解のないように説明しておきますが、クロモリ製とはいえこのハンドルのしなりは控え目で、カーボンライザーバーには及びません。
恐らく、前述したように手首の角度が自然になっていることもありますが、バーエンドが下向きになっていることにより地面からの突き上げがダイレクトに伝わりづらい性質があるのかも知れません。
言葉にしづらいですが、握り部分の上端よりも更に上の部分で、突き上げが上手くいなされている感じでしょうか。
急なアップダウンのない短いコースですが、上りも下りも卒なくこなせ、ガレ場以外なら特に問題は無さそうです。
フルリジッドバイクでも、凹凸の激しいグラベル程度なら、上半身に負担を感じず走破できるのではないでしょうか。
最後にモロコバーの注意点を一つ。
ブレーキのセッティングは赤線とハンドルが構成する三角形の範囲に収めることを推奨します。
私もライド後にレバーの角度を微調整しましたが、角度によっては転倒時にブレーキレバーやリザーバータンクにダメージを負い、油圧ブレーキが機能不全になりかねません。
シマノ製のMTB用油圧ブレーキはリザーバータンクが上部に突き出していて、モロコバーとの相性が特に悪いです。
地面に横倒しで駐輪したり、壁に立て掛けて駐輪する際にも干渉する場合があるので、レバー角度を画像よりも更に内側に倒したり、クランプ位置をあと数cm上にするなどして、横転時のリスクに備えるのが吉。
ついでに紹介!モロコバーに似た特徴のオススメハンドル
ここからはオマケとして、モロコバーが値上げしていることを知り、もっと安いハンドルは無いものかと探した情報を共有してみます。
特に有名なのはモロコバーと度々比較される左上の「Jones H-Bar」でしょうか?バックスィープは何と45度で、軽量なアルミ製やカーボン製もラインナップされています。
モロコバーよりも高価な上に国内では店舗販売のみなのが弱味で、専用グリップが必要で自由度が低いのも難点。
お次は画像左下、Velo ORANGE「crazy bar」です。こちらも個性的な形状をしていますが、バックスィープは35度で重量は532gのアルミ製。
カモメハンドルとブルホーンハンドルを無駄なくミックスさせた仕様になっていて、価格はモロコバーよりも若干控えめです。
手首や肩の負担は減らしたいけど、目立つハンドルは嫌だ……そう感じている方には右上のSALSA「BEND DELUXE」や右下のRITCHEY「WCS TRAIL 10D RIZER」もオススメ。
BEND DELUXEはバックスィープが17度と23度から選べ、WCS TRAIL 10D RIZERもこの手のライザーバーとしては10度と少し多めのバックスィープになっています。
両者とも一般的なハンドルと同じ価格で購入できますが、劇的な変化を望むなら思い切ってRITCHEY「COMP KYOTE」などのカモメハンドルを試してみるのも手でしょうか。
個人的にかなり心が動いたのが、こちらのADEPT「OVERHANG BAR/オーバーハングバー」で、モロコバーとJones H-Barをミックスしたようなスタイル。
バックスィープは20度で素材はアルミ製の530g、別売りの「DROP HOLD STRAP/ドロップ ホールド ストラップ」を使えば簡易な前カゴとしても機能し、価格も7700円とお手頃。
良くも悪くもモロコバーのパチモノ感は拭えませんが、かなりの人気商品だそうで本家並みに売り切れの常連アイテムとのこと。
標準でハンドルバーシムが付属し、残念ながら35mm径には対応していませんが、31.8mmと25.4mmのステムクランプ径に対応します。
クロスバイクのクランプ径は大半が25.4mmなので、クロスバイクでロングライドしたり、手や肩の負担を軽減したいなら、お手軽に試せる選択肢かも知れませんね。
まとめ
重量級につき、ダメならすぐに取外すつもりでいましたが、評判通りの良ハンドルすぎて心が揺らぎまくっています。
フロントを持ち上げてみても思ったほどの重量感はなく、車重もファットバイクとしては軽い部類に入る13kgちょっとのまま……
ドロッパーポストをベタ下げすると、ママチャリのようにストレスフリーな乗り心地になってくれますし、短期間で結論を出すのが難しい状態ですね。
取り合えず、モロコバーに滑り止めのバーテープを巻いてマルチポジションハンドル化、定番のVOILE STRAPやナイロンベルトで簡易フロントキャリア化、この二つを試してから決めても遅くはありません。
既にクランプ径31.8mmステムの購入を考え始めているので、結論は自ずと出ている気もしますが……