スポーツサイクルはどれくらい乗り続けられるのか?
趣味の自転車は高価な買い物なだけに割と気になる話です。
車種や用途によって違いはあるものの、自転車の買い替えサイクルは平均で五年だそうで、寿命の限界まで乗り続けるケースは稀かも知れませんね。
かく言う私も、納車から六年後にファットバイクを買い替えています。
理由は自転車そのものの寿命ではなく、規格が古くなったことによりパーツの入手性が悪くなったことが原因。
特に、対応するディレイラーハンガーが製造終了になったのが致命的でした。
私のケースは極端な例ですが、フレームさえ無事ならパーツ交換でそこそこ長く付き合えるのもまた事実。
スポーツサイクルは交換可能なパーツが多いため、フレーム以外は総取り換えといったようなテセウスの船チックなカスタマイズも珍しくありません。
とはいえ、自転車の骨子となるフレームにも寿命は存在し、日々の扱い次第では短命化してしまうなんてことも。
フレームの素材はクロモリ・アルミ・カーボン・チタンと様々ですが、それぞれの耐用年数は実際どれくらいなのでしょうか?
※製造メーカーや車種、走行距離や使用環境により耐用年数には振り幅が出るので、あくまでも一つの目安として受け取って下さい。
カーボンフレームの寿命
まずは軽量で高剛性、おまけに振動吸収性にも優れるカーボンフレームから。
正しく管理すれば15~20年の長寿命も可能ですが、年間走行距離が5000kmを越える使い方だと10年前後が目安となります。
個人的にもっと短命な印象でしたが、落車や転倒によるクラックで本来の寿命を全うできない傾向がそう思わせているのかも。
ご存知の通り、カーボンフレームは他の素材と比べて疲労や衝撃に対しての耐性が低く、外観に目立った傷や劣化が見られなくても、長期使用で内部に亀裂が入っている何てことも。
また、カーボンフレームはカーボン繊維そのものよりも、使用されているエポキシ樹脂の劣化が厄介。
エポキシ樹脂は直射日光に長時間晒されると劣化が早まりますし、高温状態では軟化して強度の低下に繋がります。
温度が60度以上が危険ゾーンで、軟化によりひび割れや変形のリスクが発生。
夏場の自動車内では到達し得る温度なので、カーボン製自転車を締め切った車内や直射日光下に長時間放置するのは避けた方が良さそうです。
因みに、70度以上はデッドゾーンなので、オフシーズンの冬場に暖房機器の近くでオブジェ化するのも要注意。
アルミフレームの寿命
続いてはアルミフレーム。
軽量さと高剛性兼ね備え、腐食耐性が高く安価な点も魅力です。
寿命は10~20年とされますが振り幅がかなり大きく、これは低頻度で乗った場合でしょうか。
年間走行距離が5000kmを越えたりトレイルを頻繁に走っているなら、寿命10年でも大往生と言えます。
アルミフレームは湿気や雨による腐食に強いため普段使いに向いている反面、疲労強度がやや低い傾向も。
長期間に渡って過度な負荷が掛ると金属疲労を起こしやすく、突然BB付近の溶接跡に亀裂が入った……なんて話も良く聞きます。
アルミは溶接が難しく修理が困難なため、破損した際は修理よりも交換や買い替えが一般的。
ある意味、最も寿命を実感しやすいフレームかも知れません。
因みに、アルミフレームもカーボンフレームと同様に熱で強度が低下する性質があります。
影響が現れるのは200度くらいなので心配する必要はありませんが、この温度から急激に強度が低下するとのこと。
日常生活ではほぼあり得ない温度とはいえ、キャンプ中の焚火なんかでやらかしそうな気も。
クロモリフレームの寿命
長く付き合えるフレームの代名詞といえば、やはりクロモリでしょうか。
正確にはクロームモリブデン鋼と呼ばれ、鉄にクロムやモリブデンなど添加した合金です。
他のフレームに比べて重いという欠点はあるものの、振動吸収性に優れるしなやかな乗り心地、頑丈な上に修理も容易と至れり尽くせり。
メンテナンス次第で寿命は50年以上にもなりある程度の耐塩水性も備えますが、疲労強度はそれほど高く無いため、酷使し続けると徐々に金属疲労が進行します。
また、クロモリは防錆処理が寿命を左右し、湿気の多い地域や塩害を受けやすい海沿いの地域では特に注意が必要。
島国で高温多湿な日本がモロに当てはまりそうな気がするので、サビ対策は必須でしょうか。
私はクロモリバイクを二台所有しているので、Muc-Off/マックオフの「HDB-1」やKURE 6-66といった防錆剤が欠かせません。
塗装の施されていないフレーム内部が死角だったりするので、念のためシートポストを抜いて水分の溜まりやすいBB付近にも吹きつけています。
チタンフレームの寿命
最後を飾るのは、憧れのチタンフレームです。
クロモリとアルミの良いとこ取りの性質で、しなやかな乗り心地でありながら重量はアルミフレームとほぼ同等の軽量さ。
高耐久性と耐腐食性も備え、適切な使い方をすればフレームの寿命は半永久的といわれます。
非常に高額なのは知っての通りですが、現実的なフレームの寿命はクロモリと同じ50年以上か、それを超える一生モノと捉えるのが妥当でしょうか。
また、チタンは硬度が高いため加工が難しく溶接も簡単ではありませんが、破損しても修理は普通に可能。
気になる弱点は、しなやかさによるパワーロスでレースには不向きだったり、カーボンほど軽量じゃなかったりとフレームの寿命とは無関係なものが殆どです。
因みにチタンフレームはクロモリよりも軽量ですが、耐久力を上げるために僅かに肉厚に作られているとのこと。
フレーム素材で異なる再塗装の方法
オマケとして、各フレームの再塗装についてのお話。
自転車趣味が高じるとDIYで車体をカスタムペイントしたり、傷補修でリぺイントする機会があります。
チタンフレームは大抵無垢なので除外しますが、クロモリフレームとアルミフレームを再塗装する際は剥離剤で古い塗膜を除去してからの作業が正道。
ですが、カーボンフレームは剥離剤の成分がエポキシ樹脂を侵してしまうため、使用は厳禁。
再塗装するには、サンドペーパーで古い塗装を地道に除去するか、古い塗膜に足付けしてそのまま上塗りするかの二択です。
塗装業者に依頼すると大抵は後者の方法で行われますが、上塗りした塗料分だけフレーム重量が増えてしまうのが難点。
カーボンフレームは強度が高く大変軽量ですが、前述の高温も含めてエポキシ樹脂がウィークポイントになりがちですね。
まとめ
私の印象だと実質的なフレーム寿命はアルミとカーボンが5~10年くらいで、カーボンは本来の寿命を迎える前に事故死しがち。
クロモリはお手入れ次第で長生き、チタンは遺伝的に長寿といった感じでしょうか。
走行距離の目安はアルミとカーボンが3万km前後、クロモリが5万km以上、チタンが驚きの10万km以上とのことですが、あくまでも落車や転倒などのイレギュラーが無かった場合の話。
かなり大雑把な内容でしたが、エンタメとして読んでいただけると幸いです。