TPUチューブを使い始めてから七年ほどになるでしょうか。
黎明期は高価だったものの、最近はコスパに優れる製品も珍しくなくなりました。
その代償なのか、個体別にアタリ・ハズレといった博打要素が加味され、気が付けばTPUチューブの運用は「質より量」が正義。
そういった考え方が当たり前になりつつあります。
TPUチューブのパイオニアは、言わずと知れた「TUBOLITO/チューボリート」
登場したばかりの時は「これ、何て読むの?」「ツボリト?」といった感じで、カタカナでの日本語表記もメディアによってまちまちだった覚えがあります。
2016年にオーストリアの企業が開発し、同時期に姉妹品となる「REVOLOOP」もドイツ企業から登場。
この時期の製品はオーストリア・ドイツでしか生産が許されておらず、チューブ厚の均一性と高度な熱接着技術が不可欠だったのがその理由だとか。
これらのTPUチューブが人気を集め始めた頃から、バルブの強度問題や根元からの空気漏れ、チューブの不均一な変形といった不具合は報告されていたものの、今ほど安価ではなかったこともあり「質より量」な傾向はまだありませんでした。
さて、明らかに風向きが変わったのは中華製TPUチューブの登場からです。
コスパの良さが取り沙汰されるようになり「品質にムラはあるけど安いから沢山買えばOK!」といった運用方法を試す人が続出。
自転車のインナーチューブは素材が何であれ消耗品に違いありませんが、個人的にTPUチューブだけ使い捨て感が頭一つ抜けている印象が拭えません。
一流処の製品と比べるとまだまだ安いとはいえ、昨今は中華TPUですら一本1000円前後が普通のご時世です。
そろそろ物量頼みの使い捨てから卒業し、TPUチューブも品質を重視して選ぶ頃合いなのでは?
そう思っていると、少し意外なところから本命になり得る製品が現れました。

まさか、このブランドが出すとは……
正直、もっと大手のブランドから登場すると思っていましたが、今回の主役となる「AEROLite/エアロライト」を手掛けたのは自転車用アクセサリーで知られる台湾ブランド「guee/グイー」です。
シリコン製バーテープではそこそこ名の通ったブランドなものの、ここがTPUチューブをリリースするとは思ってもいませんでした。
しかも、非常に完成度が高く「量より質」を体現したかのような仕上がりで二度ビックリ。

guee「AEROLite」の外観はご覧の通りで、透明度の高いチューブ本体にオレンジ色のコーポレートカラーをあしらった珍しい仕様。
バルブ部分には最近のTPUで増えつつある金属バルブが採用され、当然バルブコアもブチルチューブと全く同じ。
樹脂製バルブのTPUチューブは一部のポンプと口金が合わないといった相性問題がありましたが、金属バルブによりその問題も解消されています。
もちろん金属製ですから、携帯電動ポンプの発熱問題にもアダプター無しでバッチリ対応。
さらに注目べきは、バルブナットとリムを上下から挟み込むラバースペーサーの存在です。
スレッドのある金属製バルブだけにしっかりとバルブナットが機能し、走行中にカタカタを異音を奏でることがありません。
リムを上下から挟み込むラバースペーサーはリムを傷付けないだけでなく、バルブ根元とバルブホールの接触によるパンクや空気漏れを予防する効果も発揮。

バルブまわりの構造にかなりの拘りを見せるguee「AEROLite」ですが、金属バルブとTPUチューブとの接着には技術的に難しい点が多く、強度不足により従来品はここがウィークポイントになってしまいがち。
guee「AEROLite」はその部分に柔軟で厚みのある素材を採用することで強度不足を補っているそうで、より接着強度が高くなるguee独自の工夫を凝らしているとのこと。
また、TPUチューブには付き物の「継ぎ目」部分にも独自の対策がなされ、2cmほどのこの部分が不均一に膨らまない作りになっています。
さて、ここまでの内容で「樹脂バルブの強度」「ポンプ口金との相性」「バルブ根元の耐久性」「接合部の不均一な膨張」といっいたTPUチューブあるあるな弱点が次々と克服されている訳ですが、極めつけはこちら。
外観からでは全くわからない部分なものの、guee「AEROLite」はTPUチューブ特有の乗り心地の硬さにも踏み込んでいて、ブチルチューブと比べても遜色のない乗車感を再現。
某所のレビューによると今までのTPUチューブとは明らかに異る、しなやかで柔らかい乗り心地が得られるそうです。

現時点でロード用、グラベル用、MTB用の三種類がリリースされ、国内でも安定して入手が可能。
気になるお値段は3500円ほどと安タイヤが買えてしまうお値段ですが、これにはちょっとした秘密が隠されています。
実はこのguee「AEROLite」はTPUチューブとしてだけでなく、チューブレスバルブとしても使えるという1粒で2度おいしい特徴を備えていて、無駄に高価な訳ではありません。
チューブレスバルブは単体で買うと1500円前後は普通にしますから、高品質TPUチューブとチューブレスバルブがセットになっていると考えれば、割高感が多少は和らぐかも知れません。
調べてみると、役割を終えたチューブからハサミで切り離してから使うそうで、前述したガスケット部の形状がチューブレスバルブのラバーベースに酷似していたのにも納得です。
TPUチューブは一度でも大きいタイヤに使うと伸びっぱなしになり、それ以下のタイヤには使えないという性質もあるため、どんな形であれ再利用できるのは嬉しい限り。
昔は古チューブからバルブを切り出してチューブレスバルブ化していた時代もあっただけに、これは温故知新なアイディアとも言えるでしょうか。
言い忘れましたが、guee「AEROLite」には修理用のリペアパッチが存在していません。
TPUチューブにはありがちなことですが、必要な場合はTUBOLITOやREVOLOOPのパッチや中華製から流用するのが近道です。
勝手な推測ですが、リペアパッチが無いのは積極的にチューブレスバルブとして再利用して欲しいからとか?

サイズ展開は上画像の通りで、バルブ長はロード用が60mmと75mm、グラベル用が40mmと60mm、MTB用が40mmというラインナップ。
重量はロード用で36gとなり、金属バルブを採用したTPUチューブとしては十分に軽量な部類に入ります。
グラベル用に650B対応の27.5インチサイズが無いのが残念ですが、今後の拡充に期待したいところ。
個人的にguee「AEROLite」はTPUチューブの持つ既知の欠点と丁寧に向き合った製品という印象ですね。
これからのTPUチューブはguee「AEROLite」と同等の機能を備えるのが当たり前になるのかも……
そんな期待をしたくなるほど、デファクトスタンダードたり得るTPUチューブです。

