幸いなことに走行中の出来事ではありませんでしたが、ファットバイクでのパンクを経験して以来、必要最低限の携帯品は必ず持ち歩くようしています。
予備のチューブは勿論ですが、とりわけ重要となるのが携帯ポンプの存在で、使い勝手の善し悪しが作業時間にダイレクトに結びつきます。
ロードバイクと違い、ファットバイクはタイヤレバーを使わなくても手だけでタイヤを簡単に付け外しでき、チューブ交換作業の大半を特大チューブに空気を注入する、ポンピング作業に費やすことになります。
ファットバイクは高圧でも2bar程なので、ポンピング自体にあまり力を必要しません。
所要時間を度外視すれば、それほど苦痛な作業ではありませんが、特大・極太のファットバイク用チューブを走れるレベルにする為には、気の遠くなるほどポンピングを繰り返さなければなりません。
よくあるロード用の携帯ポンプを使った場合では通常の3倍以上は覚悟をしたほうがよく、夏場などは悪魔の様なポンピング回数で汗だくになるのは必至です。
CO2ボンベを何本か使ってチートするのも一つの方法ですが、やはりハイボリュームの大容量携帯ポンプがあると何かと重宝します。
低圧限定なのでロード用携帯ポンプとして流用できませんし、大容量なのでどうしても嵩張る…といった専門携帯ポンプらしい欠点もありますが、ファットバイク用としておあつらえ向きな携帯ポンプを幾つか紹介します。
タイヤゲージ付きの方が良い?
路面に状況に応じて、タイヤ圧を調整するのもファットバイクの醍醐味の一つで、私もパナレーサーのデュアルヘッドデジタルゲージを所有しています。
このタイヤゲージは意外に大きく、携帯品を減らすと言う意味で携帯ポンプに機能をまとめてしまいたいのが本音ですが、ゲージ付きの携帯ポンプにはまともな製品が殆どなく、ファットバイク用に使えそうな製品となると、ますます選択肢がありません。
また、目的地に至るまでの路面状況や季節によってタイヤの空気圧を調節する目的なら、出発前にフロアポンプのゲージで確認する程度で十分ですし、パンクなどのトラブル対策をメインに考えているなら携帯ポンプがゲージ付きである必要はないと思います。
ファットバイクは0.5barの低圧でも走ることができ、『指で押して固く感じる』といったアバウトな判断で十分だからです。
むしろ、空気圧不足によるリム打パンクを気にするよりも高圧にし過ぎることに注意を払った方が良いくらいでしょうか。
トレイルや雪原など、出先のコンディションに合わせてタイヤ圧を小まめに調整する様な楽しみ方でもない限り、ゲージ付きの携帯ポンプに拘る必要はないですし、そういった用途では専用のタイヤゲージの方が捗るのではないでしょうか。
TOPEAK(トピーク) Mountain Morph
【口金】米式 / 仏式
【サイズ】322mm
【重量】250g
【最大空気圧】160psi / 11bar
【フレームマウント】あり
【ホース】あり
個人的にファットバイク用の携帯ポンプとして最初に目を付けたのが、トピークのマウンテンモーフでした。
マウンテンバイク用ということで、ロード用よりも大容量ですし、持ち手がある上にフロアポンプの様に立たせて使えるのでポンピング回数が増えても楽に対応できる仕様です。
長さが32cm程あり、付属のマウントを使ってフレームに取り付けるかフレームバッグやバックパックに放り込んで携帯することになり、価格も手ごろで入手も容易ですが、足の部分の耐久性や持ち手の使用感には賛否があるようです。
ファットバイクはもちろん、マウンテン・ロード・ミニベロと多用途に使いたい方向きで、フロアポンプライクな使い勝手と携帯性の兼ね合いが最大の魅力でしょうか。
Blackburn(ブラックバーン) OUTPOST HV ANYVALVE
【口金】米式 / 仏式
【サイズ】335mm
【重量】350g
【最大空気圧】90psi / 6.2bar
【フレームマウント】あり
【ホース】なし
ポンプの下部には圧力優先のハイプレッシャーモードと容量優先のハイボリュームモードの切り替えスイッチがあり、状況に応じて使い分けることができます。
最大空気圧が6bar強なのでロード用としては使えず、マウンテンバイクやファットバイク、一部のミニベロ向きですが、前述の切り替えスイッチの使い勝手が良く、ハイボリュームモードでは小気味よくポンピングができます。
今回紹介する携帯ポンプの中では33cm強と最も長く、ホースが付属していない為に使い勝手に不安が残りますが、低圧主体のファットバイクでなら、ホースなしでもポンピングはそれほど苦にならないと思います。
携帯ポンプで最大クラスのエアボリュームに魅力を感じる方や、ポンピングの回数を可能な限り減らしたい方向きでしょうか。
因みに私のファットバイクにはブラックバーン製のフレームバックが装着されています。携帯品を無造作に放り込めるので大変気に入っていますが、同じブランドの製品だけあってこの少し長めの携帯ポンプもそのまま放り込めてしまう余裕があります。
LEZYNE(レザイン) MICRO FLOOR DRIVE XL
【口金】米式 / 仏式
【サイズ】303mm
【重量】367g
【最大空気圧】35psi / 2.4bar
【フレームマウント】なし
【ホース】あり
レザインのマイクロフロアードライブXLは最大空気圧が2.4barと低く、まさしくファットバイク専用に作られた携帯ポンプと言えます。
フロアポンプライクな見た目をしているので『コレ、本当に携帯ポンプ?』と思ってしまいますが、幅や重量は別としても、全長は30cm強と既出の携帯ポンプよりも小さいサイズになっています。
見た目の通りフロアポンプ並みに使い勝手がよく、耐久性に関してはトピーク製よりも安心感があります。ファットバイクの特大チューブにもガンガン空気が入っていき、備え付けのフロアポンプとして使えるのも魅力でしょうか。
フレームマウントが無く、携帯するにはフレームバッグかバックパックが必須となりますが、ポンピングに対する不満が一掃されてしまう、割り切った仕様のファットバイク専用携帯ポンプでしょうか。
因みに、精度の高いデジタルゲージを搭載した同型モデル『MICRO FLOOR DIGITAL DRIVE XL』もあり、こちらを使えば別途にタイヤゲージを持ち運ぶ必要も無くなります。
SPECIALIZED(スペシャライズド)AIR TOOL BIG BORE PUMP MTB
【口金】米式 / 仏式
【サイズ】210mm
【重量】155g
【最大空気圧】50psi / 3.5bar
【フレームマウント】あり
【ホース】あり
スペシャライズドのエアツールビッグボアポンプMTBは、ファットバイクやセミファットバイクを対象とし、長さ21cmのコンパクトなサイズと1ストロークあたり90㏄のハイボリュームを兼ね備えた、大変実用的な携帯ポンプです。
デザインはもちろんですが機能性も洗練されいて、手袋をつけたままでも容易に扱える口金や本体にすっぽりと収納出来てしまうホースのギミックは大変魅力的です。
ファット用としては抜群に軽量でフレームマウントも付属していますが、大きめのサドルバッグにならギリギリ収納できるかもしれませんね。
非常に完成度の高いファットバイク専用の携帯ポンプですが、口金まわりの作りに癖があるようでホースの引き出し部分が硬くて使いづらいといった欠点もあります。
レザインの『HV DRIVE』シリーズMTB用が仕様的に似通っているので、細かな点が気になる方はホース部分が従来型になっている、こちらのポンプを選ぶのも手です。
SERFAS(サーファス) ミニポンプ MP-4 SWITCH STICK
【口金】米式 / 仏式
【サイズ】155mm
【重量】124g
【最大空気圧】110psi / 7.6bar
【フレームマウント】なし
【ホース】なし
サイズ的に場違い感は否めませんが、サーファスのミニポンプMP-4 SWITCH STICKも注目に値します。
このポンプは特にファットバイク専用というわけではなく、某ファットバイク取扱店のブログで紹介されていた逸品です。
使い方としては、パンクなどのトラブル対応としてではなく、出先でのタイヤ圧調整用と割り切ってタイヤゲージとセットで使用します。
この手の携帯ポンプは星の数ほどありますが、このポンプが選ばれた理由は前述のブラックバーン製と同様にハイボリュームとハイプレッシャーの切り替えスイッチが備わっていて、小型ながらファットバイクと相性が良いからです。
今となっては似た仕様の携帯ポンプが他にもあるので、このサーファス製にこだわる必要はありませんが、パンク修理やチューブ交換を目的としないならば、立派な選択肢の一つになると思います。
TOPEAK(トピーク) Mini Dual DXG
【口金】米式 / 仏式
【サイズ】245mm
【重量】170g
【最大空気圧】120psi / 8.3bar
【フレームマウント】あり
【ホース】なし
おまけのプラスワンとして、最後の紹介するのがトピークのミニ デュアル DXGです。
この携帯ポンプもファットバイク専用ではなく、汎用またはロード用に作られている製品ですが、ポンピングの際に持ち手を押しても引いても空気が注入できるデュアルアクションが採用されています。
このミニ デュアルに限らず、最近チラホラ見掛けるようになった仕様ですが、普通の携帯ポンプと比べてポンピング回数を半減できる優れモノですね。
ロード用として使用する場合は5barくらいが実用上限らしく、それ以上となると例によってポンピングが重くなります。
とはいえ、低圧主体のファットバイクに使用すると面白い様に空気が入り、1bar前後で運用する場合なら何ら不都合を感じず、携帯ポンプらしからぬ実力を見せ付けてくれます。
また、精度は低いもののファットバイクにおあつらえ向きなインラインゲージも設けられていて、ロードに使うよりも低圧なファットバイクに使った方が、より真価を発揮してくれるかも知れません。
まとめ
ファットバイク専用またはファットバイクと相性の良さそうな携帯ポンプを幾つか紹介しましたが、私は何故かミニベロ用に購入した筈のクランクブラザーズの携帯ポンプ『Gem(ジェム)』をファット用として使っています。
仕様としてはサーファスのミニポンプに近いのですが、切り替えスイッチによるハイボリュームモードの使い勝手が思いのほか良く、そのままズルズルと使い続ける羽目になりました。
今後、物足りなさを感じた場合はレザインの『MICRO FLOOR DRIVE XL』かスペシャライズドの『BIG BORE PUMP MTB』のどちらかを選ぶと思いますが、大容量のフレームバッグを持っている私としてはフロアポンプ並みに使い勝手の良いレザイン製に強く惹かれますね。
ロードバイクやミニベロを含む複数台持ちや、少しでも携帯品をコンパクトにまとめたい場合は、トピークの『ミニ デュアル DXG』を選ぶのも良さそうです。