怖くてライドに行けない……
数年前から危機感は覚えていましたが、ついに一線を越えてしまった感があります。
いったい何の話?
そう思うでしょうけど、タイトルからお察しいただけるように今回は「クマ」のお話。
もう、ロングライドどころか近所のポタリングですらまともにできない状態で、こちらから会いに行こうと思えば普通に遭遇できるレベル。
さて、そんな鬱積したライド欠乏症が続く中、ようやく国産のクマ撃退スプレーが登場したという興味深い情報を耳にします。
その名も「熊一目散」
徳島県に本社を構えるバイオ科学株式会社が販売している製品で、どうやら2025年の夏ぐらいから市場に出回っている模様。
クマによる被害が拡大する昨今、効果の不確かな怪しいクマスプレーが出回り始めていますし、パッケージだけ米国製に似せた粗悪な紛い物に対する注意喚起も目にします。
そんな状況下で多くの方が待ち望んでいた国産品の登場ですから、興味を惹かない筈がありません。

ラインナップはピンクカラーの「熊一目散」とグリーンカラーの「熊一目散 練習用」の二種類。
サイズは直径Φ53mm、高さ205mm、内容量280ml、重量275gと、サイズ感は500ml容量のヘアスプレーとほぼ同じ。
使用期限は製造から5年が目安となり、火気のある所や上下逆さまでの噴射はNGとのこと。
気になる価格は本体のみが税抜9000円、ホルダー付きが税抜12800円、練習用が税抜3500円と海外製の既製品と比べてリーズナブルなものの、想像していたよりも気持ちお高めな印象でしょうか。
さらに注目すべきは、米国環境保護庁/EPAの定めるクマスプレーに関する性能ガイドラインに準拠して設計されている点で、防犯用の催涙スプレーとは一線を画す代物。
EPA登録製品ではなく、あくまでもEPA認証に準拠した製品ではありますが、日本にはまだ同様のガイドラインが存在していないだけに、信頼性の目安として申し分ありません。

因みに、EPA認証済みのクマスプレーには上画像のように、EPA登録番号がパッケージのラベルに明記されています。
●有効成分のカプサイシノイド濃度が1〜2%であること
●有効成分含有量が最低7.9オンス/約225g以上であること
●噴射距離が最低25フィート/約7.6m以上、理想的には10m以上であること
●噴射時間が最低7秒以上であること
ソースによって数値にブレはありますが、上記の値が機能面におけるEPA基準のガイドライン。
熊一目散は有効成分のカプサイシンを含むカプサイシノイド濃度が 2%以上で内容量は280ml。
噴射距離が約10mで噴射時間は約10秒と十分にEPA基準を満たしています。

少し割高になるものの、熊一目散を購入するならやはりホルダー付きがおすすめ。
クマ撃退スプレーは咄嗟に使えるか否かも大変重要ですから、ここをケチってはいけません。
余談ですが、「クマスプレーを持ち歩いても罪に問われないのか?」こういった不安も付き纏います。
答えはグレーというのが実情で、正当な理由なく屋外で携帯・持ち歩きをした場合は軽犯罪法違反に問われる場合も。
あくまでも極端な例ですが、職質の際に「万が一に備えて……」といった漠然とした回答をしたり、カバンの奥底といった咄嗟に使えないような場所に所持していたりすると、あらぬ疑いを持たれてしまいます。
クマスプレーの携帯には「正当な理由」が必要で、職質されたら簡潔にわかりやすく理由や目的を説明することが大切。
「クマ避けです!」とハッキリと使用目的を主張した方が良いですし、犬の散歩や夜間の外出の際はホルダーを目立つ場所にぶら下げていた方が逆にトラブルが少なくなります。
地域によってクマに対する危機感には温度差があるため、お住いの都道府県によっては簡単な説明で理解を示してくれる場合もありそうですが、少なくとも職質で挙動不審になることだけは避けたいところ。
こういった話になると、マイナスドライバーが車内にあっただけで現行犯逮捕された事件をどうしても思い出しますね……相手側の受け取り方次第でどうにでもなってしまう状況が一番怖いかも知れません。
因みに、問題になるのはクマスプレーを外出時に携帯する時だけで、自宅での保管や常備に関しては問題にならないとのこと。

さて、熊一目散について個人的に気になったのが、安全装置が一般的なスプレーと同じキャップ式なことでしょうか。
画像左の海外製を見慣れているからこその違和感でしょうけど、ちょっぴり頼りない印象も。
一応、ボタン部分が一段低く設計されていて仮にキャップが外れた状態でも誤噴射しづらい仕組みですが、使用時に指を通せるフックが存在しないため、焦って落としてしまったなんて最悪の事態もありそう。
とはいえ、何かと説明不足な海外製にも問題はあり、黄色い帯を付けたまま携帯してしまい咄嗟に使えなかったなんて事例も。
安全装置を固定している黄色い帯は一見簡単に切れそうに見えますが、製品によっては刃物を使わないとカットできないくらいの強度があり、切断してから携帯するという基本中の基本を知らない方も多いとか。

国産品だけに使い方は丁寧に解説されていて、翻訳された物と比べて頭に入ってきやすい内容。
よく、「距離があっても壁のように使うと効果がある」なんて言われますが、クマとの距離別にそういった使い方も紹介されいて、なかなか勉強になります。
対象となる動物はヒグマ・ツキノワグマ・イノシシ・サルなどで、北海道でも安心して使用可能ですが、例によって航空法により機内への持ち込みは禁止されているので、海を渡る際は注意が必要。
最後になりますが、ヒグマとツキノワグマの両方に対応ということで、気になるのが溶剤の種類。
クマスプレーには油性タイプと水性タイプの二種類があり、水性は洗い落しやすく油性はクマに痛みを学習させるため洗い流しづらい仕組み。
水性は防犯用やツキノワグマ用、油性はヒグマなどの大型哺乳類用と大雑把に使い分けられてはいますが、熊一目散がどちらなのかについては一切情報がありませんでした。
人体に触れてしまった場合は大量の水で洗い流すようにと説明がありますし、ヒグマといった大型哺乳類にも対応していることから油性の可能性が高いですが、自爆だけにはくれぐれも注意したいところ。
米国EPA基準を満たす本格的な国産クマ撃退スプレーということで、私も一本欲しくなりましたが、予想通り人気過ぎて絶賛品薄中。
生産が追いつけば転売価格から定価へと自然と落ち着くとは思いますが、これから間違いなく需要が伸びる分野だけに、バイオ科学には今後も頑張って欲しいですね。

