少し前にファットバイクのペダルを新調したばかりなのに……
思わずこんな愚痴をこぼしたくなりますが、クランクブラザーズから私好みのフラットペダルがリリースされました。
このブランドのフラットペダルと言えば、やはり「STAMP/スタンプ」シリーズが有名で、今回はその最新モデル。
タイトルからもお察しいただけるように、その名も「STAMP 0/ゼロ」で、廉価版のSTAMP 1ペダルを街乗りにも対応できる仕様にブラッシュアップした製品です。

新ペダルのSTAMP 0も既存のSTAMP 1と同様にナイロンファイバー製のコンポジットボディを採用。
価格はSTAMP 1が税込9000円に対してSTAMP 0は税込7150円と安価で、実売価格だと5000円台で購入可能。
ひと目でわかる通り、両者の違いはスパイクピンの有無で、街乗りからトレイルまで広く対応するSTAMP 0には金属製のピンではなく踏面と一体化したソフトピンが採用されています。

上画像はSTAMP 1の現行モデルとなるGEN2で、ピン高を調整しないまま多用するとカジュアルシューズの靴底に大ダメージがあり、街乗り用としては使いづらい面がありました。
専用のシューズを履いてトレイル用として使うなら何ら問題はありませんが、街乗り用として普段使いするとなると話は別。
足裏への喰い付きを犠牲にしてピン高を2mm以下に抑えてあげないと、確実に靴の寿命が縮むことになります。

ソフトピン仕様のSTAMP 0でも靴底へのダメージがゼロではありませんが、ご覧の通り金属製のスパイクピンと比べるとマイルドで密度のある仕上がり。
ピン部分を含むペダル全体のデザインも良くまとまっていて、プラ製ペダルにありがちな安っぽさがマットな質感により緩和されている印象もあります。
海外のレビューによると、ソフトピンだけにSTAMP 1と比べて足裏への喰い付きが若干劣ると評されていましたが、興味深いことにそれはMTB専用シューズに限った話とのこと。
スニーカーといったカジュアルシューズで使うと評価が逆転するそうで、街乗り用を強く意識したピン形状が採用されているといった感想も見られました。

STAMPシリーズということで、サイズ展開はSとLの二種類。
重量はSサイズが305g、Lサイズが331gとなり、どちらもSTAMP 1と比べて若干ですが軽量化されています。
コンパクトなSサイズはグラベルロード用、踏み込みが安定するLサイズはMTBやファットバイク用。
こういった使い分けもできますが、踏面の大きいLサイズは山歩き用のトレッキングシューズや雪国で使う冬靴と併用する際にも重宝しそうです。
また、踏面の中央部分は1mm窪んだコンケーブ形状になっていて、STAMP 1 GEN2と同様に足裏にしっかりと馴染む作り。
このコンケーブ形状はANVEL製のフラットペダルといったハイエンドモデルでしか見られませんでしたが、最近は低価格なプラ製ペダルにも積極的に採用されるようになりましたね。

個人的に一番気になったのが、ベアリングを含む内部構造の違い。
公式HPによるとスピンドルはクロモリ、インナーベアリングとアウターベアリングは「Igus LL-グライドベアリング」と説明があり、新作ペダルではありますがSTAMP 1 GEN2からは特にアップデートはされていない模様。

上画像はSTAMP 1 GEN2のもので、こちらを見る限り使用されているスピンドルと二つのベアリングは新作のSTAMP 0と全く同じですね。
STAMP 1は旧モデルも新モデルのGEN2もあまり回転が滑らかとは言えないので、たとえ下位モデルでもこの部分はアップデートして欲しかったのが本音でしょうか。

念のため、交換用のペダルリフレッシュキットを調べてみると、STAMP 1 GEN2用とSTAMP 0/7/11用が別々に準備されていたものの、肝心のベアリング部分のパーツは両者で共通していて、同じ物が使われていると見て間違いありません。
因みに、STAMP 1 GEN2を使ったことが無いので知りませんでしたが、二つのベアリングはどちらもブッシュタイプ。
初心者でもメンテナスしやすいとは聞きますが、滑らかな回転を尊ぶ方には少し不満が残る仕様かも。

余談ですが、STAMP 1は旧モデルと新モデルのGEN2では仕様が激変しています。
旧モデルは内部にシールドベアリングが採用されていましたが、GEN2はシンプルなブッシュタイプに変更。
踏面もGEN2からコンケーブ形状が採用され、デザインもすっきりとした印象にリニューアルされました。
シールドベアリングの不採用は残念ですが、旧モデルでも特に回転の滑らかさには寄与していませんでしたし、スピンドルにガタが出る原因にもなっていたので、妥当な変更とも言えるでしょうか。

私は旧モデルのSTAMP 1を長いこと愛用していただけに、新作のSTAMP 0をどうしても贔屓目に見てしまいますが、買うか買わないかと聞かれたら……
たぶん「買う」と答えるでしょう。
正直、前回の記事で軽く触れたFUNNのフラットペダル「TAIPAN/タイパン」の出来も良いので悩みますが、ペダルの軽量さとカジュアルシューズとの相性はSTAMP 0に軍配が上がります。
あと半月早くSTAMP 0がリリースされていたら、ファットバイク用の新ペダルはMKSのラムダではなくSTAMP 0になっていたかも知れません。
ペア重量がラムダの425gに対してSTAMP 0のSサイズは305gとなり、ただでさえ重量級なファットバイクだと無視できない値ですからね。