自転車を話題にしたブログを続けているせいもありますが、自転車にまつわる専門用語に頭を悩ませることもしばしば。
いざ文章に起してみると、あれ?どっちが正しいの……なんて用語も多いです。
これは自転車仲間との趣味トークでもありがちな現象で、会話中に「うん?」と思わさせる経験を誰しも一度はしているはず。
「おいおい、呼び方間違ってるぜ!」
心の奥ではそんなふうに思っていても、社会性を備えたいっぱしの大人は深く考えずにスルーするのがある種のマナー。
心根の優しい方は、正しい用語をオウム返しのように会話に交えることで角を立てずに相手にアップデートを促しますが、大抵は「誤用」ではなく語呂の良さから「口癖」になってしまっている、このケースが多いです。
興味深いことに、自転車に造詣が深く長年その業界に携わっているような方でも言い間違うことがあり、YouTube上の動画なんかでもよく見掛けますね。
言葉は生き物とよくいいますが、今回はそんな曖昧だったり言い間違いしやすい自転車用語の幾つかについて、深掘りならぬ浅堀りをしてみたいと思います。
【ボトルケージ】
自転車用語で言い間違いの筆頭とも呼べるのが、こちらかも知れません。
正しくは「ボトルケージ」ですが、「ボトルゲージ」と言い間違える方が多いです。
語呂が良いので会話中にこの言葉が出ても普通にスルーしますが、計量関連のGauge/ゲージではなく、檻や籠を意味するCage/ケージが正解。
ドリンクボトルをしっかりと閉じ込めておく……ボトルケージはそんな檻のような存在です。
因みに、この言い間違いはリアディレーラーでも頻繁に起こり、ロングケージやショートケージがロングゲージやショートゲージに変化しがち。
アームの長短が関わっているので「ゲージ」の方が正しく感じますが、こちらもプーリーを閉じ込める籠や檻という意味合いなんでしょうね。
【リアディレーラー】
言葉で発する際には気になりませんが、文章にすると悩むのがこちら。
リアディレーラー、リアタイヤなどの「リア」で「リヤ」との使い分けに迷います。
世間的には「リア」と表記するのが多数派で発音的にもRearに近いそうですが、自動車関連や国土交通省などの公的機関だと「リヤ」が使われているとのこと。
また「ギア」にも似たような問題があり「ギヤ」とは棲み分けがされています。
因みに、漫画の某ワン〇-スは「ギア」表記ですね。
リアとリヤに関してはどちらが正しいという括りではありませんが、一応シマノHPには「リアディレーラー」と表記が見られるので、自転車乗りなら「リア」を推したいところ。
余談ですが、私は「リアディレーラー」ではなく、何故か「リアディレイラー」と書きがち。
どちらも間違いではありませんが、シマノHPではカテゴリが「リアディレイラー」表記、製品名が「リアディレーラー」表記と、謎の使い分けがされています。
【タイヤビード】
この言い間違いは前述したボトルケージの次くらいに多いかも知れませんね。
「タイヤビード」のことを「タイヤビート」と呼んでしまいがちです。
もちろん正しくは「Bead/ビード」で音楽に乗って刻む「Beat/ビート」ではありません。
タイヤビートの方が語呂が良く耳障りも良いですから、これは口癖として言い間違われているケースが殆どでしょうか。
ビード上げよりも「ビート上げ」の方がある意味テンションが上がるので、チューブレス化でポンピングしている最中には、間違いを指摘しないであげましょう。
それが本当の優しさです、たぶん。
【インナーケーブル・アウターケーブル】
人に説明したり文章にしたりする際に悩むのがこちら、ブレーキやシフターに使用するケーブル類の呼び方です。
これもどれが正しいといった話ではありませんが、アウターはケーブル呼びが多く、インナーだけケーブルの他に「ワイヤー」呼びされることがありますね。
専門外なので大雑把になりますが、電気用配線の分野だとワイヤーは単芯、ケーブルは外皮のある多芯といった区別があり、広義では針金や有刺鉄線などの撚線になっていない物も「ワイヤー」に含まれるとのこと。
さて、困った時のシマノ頼みですが、シマノではシフト用でもブレーキ用でもインナー用でもアウター用でも、製品名は全て「ケーブル」で統一されています。
なのでケーブルが正解!と言いたいところですが、インナーに関してはインナーワイヤーで検索すると、ちゃんと自転車用の物がヒットするので、間違いとは言い切れない側面も。
自転車の無線化や油圧化をワイヤーレス化なんて呼びますが、シマノの製品名を引用するならケーブルレス化と呼んだ方がしっくりきますね。
因みに、これが油圧式ブレーキになると呼び名はケーブルではなく「ホース」になったり、Di2だと配線が「ワイヤー」呼びになったりと、少しばかりややこしくなります。
【シートポスト】
最近はあまり聞きませんが、「シートポスト」を「シートピラー」と呼んだりもします。
古参の自転車乗りにはなじみ深いかも知れませんが、どちらの呼び方も間違いではなくシートポストは米国流の呼び方、シートピラーは英国流の呼び方とのこと。
国内では英国風のシートピラーの方が早くに定着しましたが、現在では少数派の憂き目に。
可愛そうなので、ブロンプトン乗りの方はあえて「シートピラー」と格調高く呼んであげましょう。
【フェンダー】
前述のシートポストと似たようなケースなのが、「フェンダー」と「マッドガード」です。
自転車用ならどちらも「泥除け」で済みますが、自動車用だと両者の役割が異なるので混同はできないとのこと。
自転車で使用する場合、どちらで呼んでも間違いではありませんが、米国ならフェンダーが主流、英国ならマッドガードが主流と、呼ばれ方に偏りがあるとも聞きます。
うろ覚えですが、Mucky Nutz・MUDHUGGER・RRPといったMTB用の泥除けで有名なブランドは、英国発が多かった気が。
それだけ雨が多く、ウエットなコンディションが日常的ということなのでしょうね。
個人的にタイヤの大半を覆う固定式の物をマッドガード、簡易的で取外せる物をフェンダーと呼びたくなりますが、日本には珍しく「泥除け」という便利な言葉があるので、こちらを使うのが良さそうです。
【スルーアクスル】
会話でも文章でも間違いそうになるのが、こちらの「スルーアクスル」です。
今回取り上げた中で一番馬鹿馬鹿しいケースかも知れませんが、明日届けてくれる某通販会社「アスクル」のおかげで混乱しがち。
因みに、スルーアクスルの綴りは「Thru-Axle」となり、「X」が含まれていることを意識すると間違えづらくなります。
【ブレーキフルード】
少しややこしいのが油圧式ブレーキに使用される「ブレーキフルード」と「ブレーキオイル」です。
ブレーキフルードのフルードは液体や気体などの流体を意味する「Fluid」が含まれているので、広義ではこちらが正解です。
ですが、シマノ製の油圧式ブレーキには自動車用では既に使われなくなった鉱物油こと「ミネラルオイル」が使用されているため「ブレーキオイル」と呼んでも間違いではありません。
各社のパッケージを見るとわかりますが、グリコール系のDOT5.1を使用したSRAM製には「FLUID」の表記があり、鉱物油を使用したシマノ製やマグラ製には「MINERAL OIL」ないし「OIL」の表記が見られます。
【クイックリリース】
未だに違いがさっぱり分からないのが、この「クリックリリース」と「クリックレリーズ」です。
シマノのパッケージで確認してみると「QUICK RELEASE」と表記があり、「なんだ……リリースじゃん!」と納得するのですが、リリースとレリーズはどちらも綴りが全く同じ「RELEASE」であるという落とし穴が。
外来語をカタカナに直した際の弊害ですが、字面だけではどちらが正解なのがが全くわかりません。
とえはいえ、シマノ公式の「Shimano_Quick_release.pdf」というマニュアルには「シマノ・クイックレリーズの安全な使い方についての重要なお知らせ」といったように、ハッキリと「レリーズ」の記載があります。
シマノ的にはレリーズが正解かと思いきや、フロントハブとクリックレバーがセットになったシマノ製品ページでは「クリックリリース」表記だったりと、リアディレーラーに続いてまたもやブレブレ。
どちらの呼び名でも間違いでは無さそうですが、この疑問を調べた先人によると、現在ではクイックリリースと呼ぶのが多数派になっているそうです。
余談ですが、この「レリーズ」という用語はカメラ界隈で使われることの方が多く、主にシャッターを切る動作を意味するとのこと。
【アーレンキー】
最後を飾るのがこちら、自転車趣味で必ずお世話になる工具こと「アーレンキー」です。
実はこのアーレンキーないしアレンキーという呼び名、経緯は不明なものの自転車界隈でしか使われず、他の業界では通用しづらかったりします。
六角レンチ、ヘックスレンチ、ヘキサレンチ、ヘックスキーといったふうに、様々な呼ばれ方をされますが、自転車界隈で使用されるアーレンキーという呼び方だけが妙に浮いている気も。
アーレンキーを呼ばれるようになったのは、米国のAllen Manufacturing Company社の発明品だったのが影響していて、商標的には「アレンレンチ」とのこと。
例えるならステープラーとホッチキスみたいな関係で、自転車業界にだけ何故か商品名がそのまま定着してしまったそうです。
日本工業規格では「六角棒スパナ」が正式名称だそうですが、私はシンプルに「六角レンチ」と呼ぶことが多いですね。
まとめ
言い間違いやすかったり、曖昧だったりする自転車用語を幾つかピックアップしてみましたが、これはほんの一部でしょうね。
備忘録として今後も定期的に更新していく予定ですが、冒頭でも触れた通り深掘りではなく浅堀りなので、内容の薄さと専門性の低さには目を瞑っていただけると幸いです。