良かれと思ってしたことが、逆に事態を悪化させる……
自転車のメンテナンス絡みで、そんな経験はありませんか?
前回の記事でチューブレスタイヤのパンク修理について話題にしましたが、実は作業の途中でかなりの苦戦を強いられていて、それが今回の内容へと繋がります。
私のバラ完グラベルロードのホイールはMAVIC/マヴィックのグラベル用ホイール「ALLROAD S」の700C版。
飛び抜けた特徴こそありませんが特に不満は無く、今に至るまで使い続けているのですが、購入当時から疑問に思っていたことがありました。
このホイールはリムの内側に長方形の「黒いシール」が意味深に貼られていて、どんなに調べてみても用途や目的が全くの不明。
事の顛末から「マニュアルにちょっとくらい説明があっても良いのでは?」なんてマヴィックに愚痴りたくなりますが、ようやく黒シールの役割が判明し、ずっとモヤモヤしていた胸のつかえが取れました。
いきなり結論からお伝えしておきますが……
剥がしちゃアカン!
どんな些細な物にでも、しっかりとした役割があるのですよ。
マヴィック製ホイール内側に貼られた「黒シール」の役割とは?

さて、こちらが件の黒シールで画像は購入直後に撮影したもの。
シールの隅が浮き気味になっていて、剥がしてみたくなる衝動に駆られます。
非常に頼りない貼り付け加減なので、初見では生産管理用のシールかと思いましたが、文字や記号の類は一切なく謎の存在感を放っています。

位置的にはちょうどバルブ穴の反対側で、アルミ製リムの接合部分に該当します。
「ALLROAD S」はニップル穴が存在せずリムテープを必要としないホールレスリムですから、この時点でリムの気密性に関わる何かだとは薄々感じていましたが、黒シールが頼りなげな印象であることには変わりありません。
接合部分をシーリングするには作りがお粗末過ぎますし、どう見ても真っ黒なシールが無造作に貼られているだけにしか見えず謎が深まります。
この黒シールについて情報収集してみたところ、わかったのはユーザーの大半がそのまま気にせずセットアップしていること。
タイヤシーラントを入れて運用すると直ぐにシワシワに変形してしまう程度の耐久性しか持ち合わせていないこと。
このふたつだけでした。
これ以上深く考えるのも面倒だったので、そのまま黒シールを剥がさずチューブレスタイヤをセットアップ。
喉の奥に小骨が引っ掛かったような感覚のまま、二年の月日が流れました。
残念ながら、こんな厄介なことになるとは思っていなかったので写真を撮り損ねていますが、件の黒シールは度重なるチューブレスタイヤのセットアップとシーラントの影響でみすぼらしい姿に。
もうシワシワのヨレヨレだし、いっそ剥がしてしまえ!

そんな安易な行動の結果がこちら。
なんだ、ビビってた割に剥がしても大したことは無いじゃないか……
私が予想した通り、黒シールはリム接合部分のシールリングを隠すように貼られていて、要はお化粧用だった訳です。
リムの接合部分はホットボンドに似た樹脂状のペーストで補強されていて、これによりリムの気密性が保たれていました。
これくらいなら別にテープで隠す必要も無いのでは?
そう思ったのも束の間、この黒シールには浅慮な私にはうかがい知れない本来の役割があったのです。
因みに、黒シール自体はシーラントの影響で劣化しているため剥がしやすいのですが、黒シール下面の接着層が強力に貼り付いていて、剥がすのに苦労しました。
この時点で、安易に剥がしちゃダメな物だと理解すべきでしたね……

別角度からの画像でみると、先ほど説明した樹脂部分がハッキリと見えます。
自身のやらかしを自覚したのは修理を終えたチューブレスタイヤのセットアップ時で、ファットバイク用の大容量フロアポンプで必死にポンピングしようが、虎の子のCO2カードリッジでチートしようが、一向にビードが上がりません。
CO2カードリッジを使用した際に、上画像の部分から盛大に空気が漏れていたため、まさかあの頼りない黒シールが本当に気密に影響していたのでは?
そんなあり得ない想像が一瞬頭を過りましたが、ビードが上がらない理由は全く別のところにありました。
ハイ、リム接合部は樹脂で固められています。
樹脂部分の表面はゴムのように滑りが悪く、しかも凸凹のある不均一な仕上がり。
もうわかりますね、黒シールを安易に剥がしてしまったお陰で、この部分がビード上げのボトルネックとして復活してしまった訳です。
あの頼りなかった「黒シール」は雑に加工された樹脂表面に貼り付けることにより【1】ビードとリム間の摩擦を軽減【2】ビードとリムの密着を補助。
このふたつを陰ながら下支えしていたことが判明し、どんなにヘロヘロになっても安易に剥がすべきではありませんでした。
自分の愚かさを責めつつ作業を続けるも、ビード上げ成功まであと一歩のところで失敗を繰り返す、地獄のリセマラが続きいよいよ疲弊してきます。
ゴミ箱を漁ってとうに捨ててしまった黒シールの回収も考えましたが、接着層をズタズタに剥ぎ取ってしまっているため、仮に回収しても再利用は望み薄。
あれこれ悩んだ末に、用途や特徴に共通点のあるチューブレス用のリムテープで代用することを思い付き、これが大正解でした。
患部を覆うようなサイズにカットして剥がれづらいように角を丸める加工も加えて貼り付けると、フロアポンプによるビード上げにようやく成功。
最悪の事態だけは辛うじて回避できました。
最後に重ねて言いますが、マヴィック製ホイール内部に貼られている黒いシールは自主的に剥がしてはいけません!
誤って剥がしてしまったり寿命が来てしまった場合はチューブレス用のリムテープで代用しましょう。
まとめ

自身の軽率さを盛大に自己紹介してみましたが、ホイールの説明書きに一言あって良さそうな気も。
マヴィックHPを見た限りシール単体では手に入らないみたいですから、不幸にも黒シールを剥がしてしまった方は素直にチューブレスリムテープで代用しましょう。
因みに、私が使っている「ALLROAD S」は一世代前の製品で、画像下のように現行モデルはリム側面にデカデカとテキストが刻まれています。
現行モデルの「ALLROAD S」「ALLROAD SL」にも、この厄介な黒シールが引き続き使われているのかは不明ですが、接合部分が必要なアルミホイールならではの問題かも知れませんね。
余談ですが、今回の一件で真空断熱ボトルの底に貼ってあるシールの話を思い出しました。
あれも真空処理後の溶接穴を保護する役割があるそうで、安易に剥がしてはダメだったはず。