随分前になりますが、このブログで「街乗りMTBにオススメのタイヤ」というお題目で記事を書いたことがあります。
その記事中で紹介し、自身も愛用していたIRC「MARBELLA/マーベラ」がいつの間にか生産終了の憂き目に。
あんなに良いタイヤだったのに……どうして?
我ながら思い入れが過ぎるものの、幾多のロングライドを共にした相棒のようなタイヤだっただけに、別れにはほろ苦さが伴います。

そして、このウインドウズXPの壁紙みたいなのが、在りし日のIRC「MARBELLA/マーベラ」の勇姿。
29×2.25でタイヤ幅は57mmと細すぎないサイズ感。
重量は600gアンダーの575gという軽量さ。
トレッド面にダイヤモンドパターンのノブを備えたセミスリック仕様。
残念ながらチューブレスレディには非対応なものの、このマーベラはMTB用タイヤでありながらグラベルタイヤ顔負けの資質を備えていました。
既に5年以上前のモデルですし、クリンチャー専用という点が時代にそぐわなかったことも生産終了の一因でしょうけど、競合かつ更に古参なSchwalbe「 G-One Speed」が未だ現役なだけに、私としては惜しいの一言。
さて、代替品になりそうなタイヤは幾らでもありそうな気もしますが、実はタイヤ幅50mm以上で重量600g以下という条件を満たすMTB用タイヤはそこそこ希少な存在だったりします。
絶賛増殖中のグラベル用タイヤまで視野に入れたとしても状況に大きな変化はなく、この条件は意外にも狭き門。
思入れが強かった故マーベラにはかなり贔屓目ですが、今回はその後釜決定戦ということで軽さを重視した街乗りMTB向けタイヤを幾つかピックアップしてみました。
街乗り向けMTBのタイヤに幅50mm以上を求める理由

重量600g以下はわかるけど、タイヤ幅50mm以上に拘る理由ってなに?
本題に入る前にこの点について少しだけ触れさせて下さい。
私は過去にフルサスMTBに使えるタイヤ幅の限界を検証したことがあり、MTBらしい外観を損なわないタイヤ幅の下限はおよそ50mmという結論に至っています。

上画像は29インチのフルサスMTBに700×40Cのグラベルタイヤを履かせた時のものですが、この通り一目瞭然の貧相さ。
タイヤを細くしたことで各部のバランスが崩れてしまい、頭でっかちに見えるサドル、スカスカな前後フェンダー、BBハイトの低下による路面とペダルの接触などなど、厳ついフルサスでやると目も当てられないことに。
走りの軽快さはクロスバイクに迫るものがあり、目を瞑って走ればMTBとは気付かないのでは?
そう思ってしまうくらい走行感は激変しましたが、流石にこれは恥ずかし過ぎて常用を断念しました。
フレームの細いクロモリMTBなら40mm台後半でも許容できる可能性はあるものの、MTBらしさを維持できる最低限のタイヤ幅は50mm、欲を言えば55mm以上が望ましいでしょうか。
あらためて画像を見直すと牧場に居るポニーのような面持ちですね、たぶん短足っぽく見えるからでしょうけど……
※ここで説明する必要は無いと思いますが一応補足。
MTB用の27.5インチ/29インチサイズのタイヤはグラベル用の650B/700Cサイズのタイヤとそれぞれ互換性があります。
軽さ重視!街乗り向きな【MTB・グラベル】タイヤあれこれ

ようやく本題に入りますが、トップバッターはやはりこちらでしょう。
MTBの街乗りカスタマイズでは良く知られたタイヤ、Schwalbe 「G-One Speed」です。
廃番となったマーベラとは対照的にこちらは2016年のリリースからブラッシュアップを重ね、なんと10年以上も愛され続けているセミスリックタイヤ。
卓球用ラケットのラバー面のようなドット状のトレッドパターンが印象的で、転がりの良さもピカイチです。
●Schwalbe 「G-One Speed」 ※グラベル用700Cは28インチ表記
27.5×2.00 ETRTO 50-584 重量515g チューブレス対応
28×2.00 ETRTO 50-622 重量560g チューブレス対応
29×2.35 ETRTO 60-622 重量530g チューブレス対応
いずれもチューブレス対応となり、実売価格は9000~13000円くらいが相場でしょうか。
因みに、画像右のSchwalbe G-One Biteもなかなか優秀で、密集したノブにより転がりも良く、28×2.00/ETRTO 50-622サイズで565gと比較的軽量な仕上がり。
ぶっちゃけG-One Speedのパンク耐性にはあまり期待できないので、ノブありの方が多少の安心感があります。

個人的にG-One Speedに一家言あるのは過去に海外通販で入手した幅60mm版を使っていた経験があるからで、度々パンクの洗礼を受けました。
パンク耐性そのものが極端に低いという訳でないものの、トレッド面が薄いが故にサラサラ系のシーラントが効きづらい印象でしたね。
せっかくのチューブレス対応のなのにもったいない面もありますが、G-One SpeedはTPUチューブで運用するか、性能の高いシーラントで運用するのがオススメ。
私はチューブレス運用のG-One Speedで3回パンクしましたが、TPUチューブ運用のマーベラはほぼ同じ使用期間にもかかかわらずパンク回数はゼロ。
もちろんマーベラも無傷ではないでしょうけど、チューブレスは小さな穴でもシーラントがいちいちアピールしてくるので、パンクを自覚しやすいという側面もあるのでしょう。

お次はこちら、何故か既視感のあるグラベル用タイヤ、Continental「TERRA HARDPACK SHIELD WALL」です。
このタイヤを見てピンと来た方はかなりの街乗りMTB通かも知れませんね。
過去にContinental Speed King RaceSportとしてリリースされていた超軽量MTBタイヤがグラベル用として生まれ変わりました。
●Continental「TERRA HARDPACK SHIELD WALL」
650×50B ETRTO 50-584 重量535g チューブレス対応
700×50C ETRTO 50-622 重量565g チューブレス対応
MTB用だったSpeed King時代は27.5×2.2も29×2.2 も400g台という驚異的な軽さを誇りましたが、チューブレス対応とパンク耐性強化のシールドウォールを獲得した代償として500g台へと増量しています。
見た目の通り、転がりは良さは折り紙付きで速度維持も容易ですが、異物による刺突パンクには弱く砂利道や舗装路の方が得意なタイヤとのこと。
路面を選ばずに無茶なライドをすると刺突パンクを招きやすく、この性質はG-One Speedとも共通していますね。
セミスリックで幅広なグラベルタイヤはトレッド面が薄い傾向にあるため、ロード用タイヤよりもパンク耐性が低いことも珍しくありません。
幸い実売価格が6000円弱とコスパに優れるため、パンクを恐れず使い倒すのも手でしょうか。
また、実際のタイヤ幅は48mm程度とのことなので、ボリューム重視の場合はその点も留意したいところ。

続いては通好みなタイヤ、Teravail「Updraft Tire」とULTRADYNAMICO「Cava JFF/RACE」のお二方。
●Teravail /テラベイル「Updraft Tire」Light & Supple
700×50C ETRTO 50-622 重量580g チューブレス対応
こちらもグラベル用タイヤとなり、外観も含めて前述したTERRA HARDPACKによく似た仕様。
軽量さはもちろん、柔軟な乗り心地と転がりの良さに定評があり、巡航スピードの維持も得意。
セミスリックにつきパンク耐性が気掛かりなものの、トレッド面とサイドウォールにパンク保護機能を備えたグラベルレースタイヤとして設計されているせいか、思ったほどパンクしないという評価が聞かれます。
ネックとなるのはどちらかと言えばお値段の方で、10000円強と聞くと嫌でも競合するTERRA HARDPACKと比べてしまいがち。
残念ながらサイズは700C用のみですが、こちらにはタンサイドがラインナップされているので、あえて色味に拘って選ぶのも悪くありません。
●ULTRADYNAMICO/ウルトラダイナミコ「Cava」JFF/RACE
27.5×2.2 ETRTO 57-584 重量JFF 585g/RACE 570g チューブレス対応
26×2.1 ETRTO 54-559 重量JFF 535g/RACE 535g チューブレス対応
新進気鋭のタイヤブランドとして知られるULTRADYNAMICOからは、セミスリックタイヤ「Cava/カヴァ」がリリースされています。
Cavaにはしなやかな乗り心地と軽快さを重視したRACEや、バランスとコスパに優れるJFFなどがあり、グラベル用以外にもタイヤ幅2インチオーバーのMTB用をラインナップ。
オンロード7割、グラベル3割といった運用に向いたタイヤで、スピードを重視したグラベルライドでは非常に高い評価を獲得しています。
こちらはテラベイルの穴を埋めるように、MTB用となる27.5インチと26インチのサイズが選べ、タイヤ幅は55mm前後と太目のグラベルタイヤよりも主張がしっかりしているのが魅力。
気になるパンク耐性は、やはりRACE版がデリケートだそうで、街乗り用として使うなら平均的なパンク耐性を備えるJFF版を選びたいところ。
実売10000円程度と高額な上に700Cで50mm以上のサイズが存在しないのが残念ですが、個人的に廃番となったマーベラに一番近い印象を受けるのは、このタイヤでしょうか。

先ほどのCavaも正確にはこちらに含まれますが、ここからはグラベル用タイヤではなくMTB用タイヤからのご紹介。
●Schwalbe/シュワルベ「Thunder Burt」
27.5×2.10 ETRTO 54-584 重量510g チューブレス対応
29×2.10 ETRTO 54-622 重量545g チューブレス対応
MTB乗りにはよく知られた古参のXCタイヤで、トレイルでは驚異的な速さを発揮。
れっきとしたMTBタイヤでありながら転がり抵抗が非常に低く、速度維持の労力はロード用タイヤに迫ります。
一応、サイドカットへの耐性が低いという弱点はあるものの、街乗り用でならそれほど心配する必要は無いかも。
実売価格は12000円前後と高額で、国内では品薄により値上がり傾向なのも気になるところ。
●MAXXIS「ikon/アイコン」
27.5×2.20 ETRTO 56-584 重量590g チューブレス対応
29×2.00 ETRTO 50-622 重量658g チューブレス対応
こちらもMTB界隈ではよく知られたタイヤで、ノブ付きながらそこそこの軽量さを誇り、実売価格は8000円ほど。
29インチ版は600gを超えているので本来なら今回の選定からは漏れますが、定番タイヤなのでオマケでのご紹介。
街乗り用として使っている人の多いMTBタイヤで、舗装路では速く、荒れた路面では快適という真逆の要素を兼ね備えた非常にバランスの取れたタイヤです。
聞くところによると、タンカラーが選べるのも街乗り用として好まれる一因だとか。
●Continental「Race King ProTection」
27.5×2.20 ETRTO 55-584 重量570g チューブレス対応
29×2.20 ETRTO 55-622 重量605g チューブレス対応
この製品も軽量なMTBタイヤとしては外せない存在につき、600g超えの29インチ版もオマケで追加。
低いノブと密集した配置により舗装路上でも優れた転がり性能を発揮し、中央部に集中した3mm高のノブがパンク耐性を高めてくれる効果も。
私も過去に使っていたことがあり、街乗り用としてだけでなくライド先で見付けた気になるトレイルにも寄り道できてしまう「遊べるタイヤ」としての印象が強く残っています。
流石にセミスリックと比べると走りに抵抗感がありますが、MTBによるロングライドで一番不安を感じなかったのは、このタイヤかも知れません。
因みに、実売価格にはかなりのバラつきがあり、サイズによってまちまち。
低価格なのは大抵26インチ用なので間違えて購入しないように注意しましょう。
舗装路はスリックで!MTBに使える軽量なアーバンタイヤ

ついでなので街乗りの為に作られたアーバン用タイヤからも幾つかご紹介。
こちらは600g以下という条件を度外視していますが、ノブのないスリックタイヤが多いため増量分は転がりの良さでカバーという目論見。
●WTB「ThickSlick/シックスリック」COMP
26×2.0 ETRTO 50-559 重量620g クリンチャー専用
27.5×1.95 ETRTO 50-584 重量710g クリンチャー専用
29×2.10 ETRTO 52-622 重量705g クリンチャー専用
まずは画像左のWTBシックスリックですが、ご覧通り丸坊主のスリックタイヤ。
ピストバイクのリアタイヤや街乗りカスタムのMTB用として定番人気の製品で、厚いゴム層により高い耐久性と長寿命という特徴を備えます。
言うまでも無く、舗装路上での転がりは抜群で街乗り用として申し分のないタイヤ。
また、溝なしのスリック故に雨の日が苦手な印象を持たれがちですが、滑りやすさは他のタイヤと大差はないとのこと。
MTB向けのサイズは廉価モデルのCOMP版にしか存在しませんが、実売価格は6000円前後。
どのサイズも重量は700g前後とそれほど重くはなく、転がりの良いスリックタイヤでなら十分に許容範囲でしょうか。
お次はContinentalのアーバン用タイヤ「CONTACT 」シリーズから。
●Continental「CONTACT Urban」画像右上
27.5×2.00 ETRTO 50-584 重量620g クリンチャー専用
29×2.00 ETRTO 50-622 重量655g クリンチャー専用
街乗り向きであると共に時速50kmまでの電動自転車向けに設計されたアーバンタイヤで、転がりの軽さだけでなくパンク耐性の高さも魅力。
チューブドのクリンチャー専用で重くなりがちなワイヤービードにもかかわらず、気密層を必要としないせいか重量は600g台と予想外の軽さ。
実売価格も5000円前後と安価ですし、パンク耐性の高さは毎日の通勤・通学用としても使い出がありそう。
癖が無くバランスの良いタイヤなので試しに使ってみたくなりますが、MTB向きな幅50~55mmの製品が国内では殆ど流通しておらず、入手が難しのが残念ポイント。
●Continental「Pure CONTACT」画像右下
27.5×2.00 ETRTO 50-584 重量615g チューブレス対応
29×2.00 ETRTO 50-622 重量685g チューブレス対応
個人的にゴツ目のトレッドパターンが好みなCONTACT シリーズの最新モデル「Pure CONTACT」
こちらは四層構造による高い耐パンク性能を備え、チューブレスでの運用も可能。
また、低い転がり抵抗は電動自転車のバッテリー節約にも効果的に働き、強度面も含めてe-MTBの街乗り化には願ったり叶ったりなタイヤ。
軽量、高パンク耐性、チューブレス対応、タンカラーありと良いとこ尽くしなタイヤですが、実重量の個体差が大きいそうで、ハズレを引くと700g台も普通にあり得るとのこと。
「Pure CONTACT」は比較的新しいタイヤということもあり日本国内では入手が困難。
e-MTBの街乗り化を画策している方はドイツ系海外通販のBIKE24やR2BIKEあたりを頼るのが近道です。
重さは妥協!入手性の良い街乗りMTB向けのタイヤ

最後は600g以下という重量面には目を瞑り、国内でも入手が容易なタイヤに注目してみます。
一押しはやっぱりパナレーサーのグラベルキングシリーズで、重量面も大きく劣ってはいません。
●Panaracer「GRAVELKING SK」画像左上
650×54B ETRTO 54-584 重量660g チューブレス対応
700×50C ETRTO 50-622 重量640g チューブレス対応
●Panaracer「GRAVELKING X1」画像左下
700×50C ETRTO 50-622 重量640g チューブレス対応
現時点のグラベルキングシリーズで幅50mmを超えるタイヤはこの二種類のみとなり、SKもX1も無印版は実売価格が5000円ほどと財布にも優しいお値段。
聞くところによるとSKには小石を拾いやすい悪癖があるそうで、新モデルのX1では石を弾きにくいトレッドパターンが採用されているとのこと。
さて、マーベラの後釜決定戦ということで、最後の最後にIRCからもチョイス。
●IRC「BOKEN G-CLAW」画像右上
700×50C ETRTO 50-622 重量610g チューブレス対応
IRCのグラべル用タイヤで唯一タイヤ幅が50mmなのが、こちらの「BOKEN G-CLAW」
MTBとの相性が良さそうなゴツい見た目の割に重量は610gと軽量で、実売価格は6000円弱とこちらも財布に優しいお値段。
低いノブに覆われた外観からもお察しいただけるように舗装路はあまり得意としておらず、同じIRCなら画像右下の「BOKEN LIGHT」やセミスリックの「BOKEN PLUS」の方が街乗りに向いた仕様になっています。
残念ながらどちらもタイヤ幅が50mmを超えず、マーベラの後継としてはボリューム不足な印象が拭えません。
「BOKEN G-CLAW」はMTBのXC用タイヤとグラベルタイヤの中間に位置する存在だそうで、IRCのグラベルタイヤでは最もオールラウンドに楽しめる製品とのこと。
セミスリックと比べると確かに舗装路は苦手なものの、ライド中に未舗装路へ寄り道する癖がある人には良き相棒になってくれるかも知れませんね。
まとめ
IRC「MARBELLA/マーベラ」の生産終了に伴い、久々に街乗りMTB向きなタイヤを漁ってみました。
幅50mm以上で重量600g以下という結構シビアな条件でしたが、グラベルタイヤは幅50mm、MTBタイヤなら幅55mm前後の製品が目立ちましたね。
以前は400g台のタイヤも幾つか存在していたものの、チューブレスレディ対応の影響からか、どの製品も100g前後の増量は当たり前という状況に。
難しいことを考えずに脳死で選ぶなら「Schwalbe G-One Speed」あたりが確実でしょうけど、私にはWTBの「ThickSlick/シックスリック」が魅力的に映りましたね。
丸坊主のタイヤは一度も使った経験が無く、ある種の憧れもあるので、走行感の違いが気になるところ。
あと、意外にもIRCの「BOKEN G-CLAW」がお気に入り。
やっぱりMTBにはゴツゴツしたノブ付きタイヤが似合いますから、外観の無骨さにはどうしたって惹かれます。

